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最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)145号 判決 1968年6月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人寺井俊正の上告理由第一点について。

記録によれば、上告人が、原審において被上告人らに対し金一二〇万円およびこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める理由として、上告人は、昭和三二年五月九日木村四郎(第一審被告)との間に、上告人が木村四郎に対し、手形割引の方法で金員を貸し付け、同人が右貸金について弁済期の翌日から日歩金五銭の遅延損害金を支払う旨の手形割引契約を締結し、被上告人らは同日上告人との間に木村四郎の右債務について元本極度額一二〇万円を連帯保証する旨の根保証契約を締結した旨主張したのに対し、被上告人らは、それぞれ、右のような根保証をしたことは認める旨陳述していることが認められるが、右上告人主張の保証契約がその主張のような根保証であるかどうかは、契約の解釈に関する法律問題であるから、たといその点に関する当事者の見解が合致していても、裁判所は右合致したところに拘束されることなく、自己の見解に基づいて右と異なる法律判断をすることを妨げられないものというべきである。そこで原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同第二点について。

原審は、所論甲第三号証のほか原判決挙示の証拠を総合し、原判示のように、上告人が、木村四郎に対し同人の精米業の運転資金として金一二〇万円を被上告人らの連帯保証のもとに手形貸付をするにいたつた経緯について認定し、右事実によれば、被上告人らの右連帯保証契約は根保証ではなく、たんに木村四郎が自己の運転資金として借り受ける最高金一二〇万円の特定債務を保証した将来債務の保証にすぎない旨判断しているが、前記各証拠に照らせば、原審の右認定判断は首肯できないことはなく、原審が、所論乙第五号証の二、三を排斥した点にも違法は認められない。原審が、上告人の根保証に基づく請求を棄却したのは相当である。論旨は、原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採用することができない。

同第三点について。

原判決の挙示する証拠および説示によれば、原審が、被上告人らが昭和三三年四月二六日木村四郎の上告人に対する金二五〇万円の債務について連帯保証をした事実は認められないとした判断は、肯認することができる。論旨は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採ることができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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